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大木 実 きみが好きだよ

図書館の新しく購入した本を置いてある棚に、赤い表紙の小さな薄い本を見つけた。大木実の詩集「きみが好きだよ」、である。「きみ」は著者の妻。大木実は徴兵で戦地にいっているから、私達の親の世代だと思う。ネットで調べると、1913年生まれ、1996年没とあった。
 婆さんが若いころ、日本は大半の人々は貧しい暮らしをしていた。婆さんの家も、子沢山だったから、食べるのがやっとのその日暮らし。それでも貧しいとは思わなかった。周囲も似たような暮らしだったから、自分達が貧しいということさえ知らなかった。今はその頃と比べようもないほど豊かになった。それなのに、いつも何かが足りなく、どこかが欠けている気持ちになる。大木実の詩を読んで、自分が大切なものを、失くしてしまったことに気がついた。
    朝
  わたし達の小さな部屋で
  わたし達のはじめての夜があけた朝
  おんなは起き出して味噌汁をつくっていた

  旅にも出ず
  ひとの訪れもなく
  ふたりで向かい合った貧しい朝餉 そして昨夜
  まだお互いに名も呼ばず
  おんなもわたしも涙を耐えていた

  その朝も
  いつもの朝のように
  わたしは勤め仕事へ出て行った

by babamama_123 | 2009-05-07 18:22 | 読む | Comments(0)