スーパーで

夕方近くのスーパーで、晩御飯は何にしようかとお魚を物色しているとき、「今晩は」と親しげに話しかけられた。知っているような顔、でもとっさに名前がでてこない。「うちのわこちゃんがね」と続けて言われたとき、やっと名前が浮かんだ。絵の教室の隣にある巽画材店の奥さんだった。画材店はこのスーパーから1キロ近くも離れている。もっとずっと近くに大きなスーパーがあるのに、奥さんは時々ここに来られた。冬の間に2,3回はこの魚売り場で出会っている。その時は、「わこちゃんが固形のキャットフードを食べなくて。人間よりわこちゃんの食事つくりがたいへんなのよ」といわれていた。
魚屋の前で立ち止まって話を聞くと、そのわこちゃんが、3月11日になくなった、と言われた。享年20歳。老衰なのだそうだ。なくなる一週間前から食欲がすっかりんなくなり、病院で点滴などしてもらったが、駄目だった。わこちゃんがいなくなってから家族三人の目の落ちどころがなくなって、なんとなく家の中がぎくしゃくした。やっとわこちゃんのいない生活になれてきたところだと、奥さんはすこしばかり声をつまらせた。婆さんにも覚えのあることで、なんと慰めようかと、言葉を捜していると、「そういえば、マロンちゃんのお母さんも先月いなくなってしまったのよ。手芸店の若奥さん、ずいぶん落ち込んでいたわ。でも子供3匹は元気にしてるから。真っ白いきれいな猫だったからね。どこを探してもみつからないのだそうよ」
それを聞いて、失踪してから三年になる寅雄を思い出した。その年のちょうど今頃、10キロほど先まで爺さんや娘と、とら、とらと名前を呼んで探し回った。同じように花冷えの、どんよりした天気が続いていた。
 原因は何であれ、死んでなきがらを目にすれば、やがて諦めもつくし、納得もできる。けれど行方不明といのは、いつまでも思いをひきずってたまらない気持ちになる。手芸店の若奥さんもつらいだろう。
長話のあと、魚売り場の前で画材店の奥さんと別れた。家に帰って、マロンのお母さんがいなくなったんだって、と家族に話すと、マロンには言っちゃ駄目、と娘に釘をさされた。
連休を前に、つらい事件で、人の世も冷え冷えとするこのごろである。

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by babamama_123 | 2009-04-27 15:53 | 日々の記録 | Comments(0)